※文中では、映画タイトルを『ココ』、登場人物を「ココ(「」なしも含む)」としている。紛らわしいかもしれないがご容赦いただきたい。
映画のタイトルってやっぱりリズムというか語呂というか、そうゆう読みやすさ的なのは大切でしょうと常々思っているのだけど(←前書きからめんどくさい)、まぁ何が言いたいかって『劇場版ポケットモンスター ココ』って、なんか詰まった感じというか、蹴躓いて転びそうというか、まぁ読みづらいだろうという話な訳です。
映画PVとかでタイトルを読み上げてるのが山寺宏一さんなんだけど、山ちゃんレベルの大物でも「これ、どうしたら良い感じに言えるのさ…」って何度も何度も試行錯誤したんじゃぁないかと。
とかなんとか言っときながら結局は観るんですけど…
そんで蓋を開けてみれば、これがもう超感動作で、号泣なわけでして。
やっぱ観てみないと分からんもんですね!
タイトルが読みづらい?語呂が悪い?誰が言ったんですかね。
……私でした。
というお決まりの無駄な前書きが終わったところで、今回は『劇場版ポケットモンスター ココ』の魅力を、感想を交えつつネタバレなしでご紹介!
あわせて、劇中に登場する伝説のポケモン「セレビィ」と「ザルード」の関係性の考察についても記事の最後にまとめたので、興味のある方は是非。(物語の核心とは関係のない内容なので読んでも支障はないけど、こちらは一応ネタバレの部類ではあるのでご注意を。)
目次
『劇場版ポケットモンスター ココ』ってどんな映画?
劇場版『ポケットモンスター』シリーズ第23弾目。ポケモンだけが暮らす「オコヤの森」を舞台に、ポケモンのザルードと彼に育てられた少年・ココとの種族を超えた親子関係が描かれている。松本梨香、大谷育江、林原めぐみなどポケモンシリーズお馴染みの声優と共に、上白石萌歌、中村勘九郎、山寺宏一、中川翔子がゲスト声優として作品に参加している。シンガーソングライターの岡崎体育が、メインテーマや劇中音楽のプロデュースを担当した。
引用元:MIHOシネマ
【作品情報】
監督:矢嶋哲生
脚本:冨岡淳広、矢嶋哲生
原案:田尻智
出演:松本梨香(サトシ役)、大谷育江(ピカチュウ役)、上白石萌歌(ココ(アル・モリブデン)役)、中村勘九郎(ザルード(父ちゃん)役)、山寺宏一(ゼッド博士役)、中川翔子(カレン役)
主題歌:木村カエラ『ただいまとおかえり』
アニメーション制作:OLM
公開:2020年
【感想】感動必至!共存と親子愛に全振りした超感動作
ディズニー映画ばりのミュージカルテイストで始まったかと思いきやトムジェリばりのコミカルテイストまで引っ張り出してくるあたりに、思わずオイオイと突っ込んでしまった序盤の展開はさておき、最後はしっかりと良き話で締めくくってくれるところは、さすがポケモン映画である。
ポケモン初の映画作品であり、原点にして最高峰と謳われる『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』。公開当時それを観て以来、たくさんのポケモン映画を観てきたけれど、『劇場版ポケットモンスター ココ(以下『ココ』)』はそれに匹敵するほど完成度の高い作品だった。
というか『ミュウツーの逆襲』を超えるかもしれない。
話の方向性やテイストも違うので一概には言えないが、それほどの魅力を秘めているのは間違いない。なにより物語の作り込みは群を抜いている。
子どもから大人まで、ポケモンファンからポケモンに詳しくない人まで、あらゆる人の心に響く映画だと感じた。
ありきたり?そんなの関係ねぇ!ココとザルードの親子愛が泣ける!
ポケモン映画といえば、やっぱり「共存」という『ポケットモンスター』にとっては切っても切り離せない究極のテーマがあって、もちろん『ココ』でもそれは非常に大切にされている。加えて「ザルード」というポケモンと、そのポケモンに育てられた少年「ココ」との親子の絆に重点をおいているのが、本作の特徴だ。
訳あって親元から離れることになってしまった赤ん坊のココを、ジャングルを縄張りとするザルード(以下、父ちゃんザルード)の一匹が拾い育てることになるのだが、この2人の関係性がとても丁寧に描かれている。「親子愛」ときたら、もちろんラストに控える感動のドラマは必須要素だろう。
ココを育てるために、掟の厳しい群れを抜け、不器用ながらも懸命に「父親」になろうと努力する父ちゃんザルード。明らかな外見の違いや、ザルード特有の技が出せないことに疑問を抱きながらも、父ちゃんザルードを信頼し、優しく逞しく生きるココ。
種族の違うもの同士が親子となる物語。自分は「ポケモン」ではなく「ニンゲン」という生き物なのだと知ってしまったココが果たしてどんな選択をするのか。1時間38分という映画の限られた時間のなかで描かれる濃密なドラマは感動必至。もう製作陣に感謝したいくらいである。
良い奴過ぎる!サトシが名脇役として大活躍
ポケモンの主人公といえば、お馴染み「サトシ」である。もちろん『ココ』でもサトシは登場するが、ほぼほぼサポート役的な立ち位置とされている。手持ちのポケモンもピカチュウしか登場しない。
なぜなら、本作における主人公は「ココ」と「父ちゃんザルード」なのだ。
それならサトシは目立たないのかと言えば、決してそんなことはない。むしろ脇役の方がサトシの良さが際立っているのではないだろうか。
昨今のサトシはというと、テレビアニメ版のポケモンでも「ゴウ」という少年とのW主人公となっており、というかむしろサポート役的ポジションのようにも思える。
運営はサトシをどうしたいのか。
そろそろ降板させたいのか。
いや、違う。サトシの真価は脇役にいてこそ発揮されることに運営が気付いたのだ。(←絶対違う)
サトシのどこがそんなに脇役向きなのかって、彼は底なしに良い奴だからである。
流石これまで長い長い旅をしてきただけのことはある。身長は伸びないし、歳はとらないが、精神面は信じられないくらいの成長を遂げていたのだ。
これが主人公としてのサトシでは、普通に良い人レベルとしか見抜けなかった。主人公版サトシは、どうしても自己中で無邪気な子供っぽさが目立ってしまっていて、まぁなんだかんだやっぱりジャリボーイなのである。
ただ、変わらないのは彼の優しさである。これが脇役であることでより一層際立ち、サトシの底抜けに良い奴感に気付くことができるのだ。
ポケモンファンの方ならきっと気付くはず。
この点も是非注目していただきたい『ココ』の魅力である。
「共存」というポケモン永遠のテーマ
ポケモンであり人間でもある「ココ」という存在が、この物語を大きく動かしていく。
生まれて初めてニンゲンと対峙するココがジャングルの秘境に齎すのは、幸福か、はたまた災いか。
是非とも、彼の勇姿を、彼の成長を、たくさんの人に見届けてほしい。
そして、今作『劇場版ポケットモンスター ココ』ではどんな“共存”が描かれるのか、ポケモン永遠テーマに着目して観てみるのも面白いかもしれない。
……やっぱり言いづらいな『劇場版ポケットモンスター ココ』って。
【考察】ザルードはセレビィの卵から生まれた
以下、ネタバレを含みます。
時を超える能力「ときわたり」を使うポケモンとして、これまでの映画にも度々登場してきた伝説のポケモン「セレビィ」。今回は登場シーンこそ少ないものの、物語のカギを握る存在として深く関わってくる重要なポケモンだ。
劇中では、長老ザルードが父ちゃんザルードの出自について語る場面や、ミリーファタウンの町長がセレビィの卵について語るシーンなど、父ちゃんザルードとセレビィの関係性について触れるシーンがいくつか描かれているが、割としっかり目にエピソードを語られるため、映画を観た人なら「ザルードはセレビィの卵から生まれたんじゃないか」と疑問に思うことだろう。
結論から言えば「セレビィが未来から持ってきた卵から生まれたポケモンは、父ちゃんザルードで間違いない」と言える。
理由は、3つだ。
1つ目は、先に触れたザルードの長老と、ミリーファタウンの町長の話である。
以下、簡単ではあるがまとめてみた。
- セレビィがいなくなって父ちゃんザルードが現れたこと、ココと出会い育てる決意をしたこと、全てには理由があり、与えられた定めがある。(ザルードの長老の話)
- セレビィは平和な時しか姿を表さないとされ、姿を消したのはジャングルに何か良くないことが起きているのかもしれない。そして、セレビィは姿を消す際には「未来から持ってきた卵を残す」という言い伝えがある。(ミリーファタウンの町長の話)
あくまで真実かどうかは断定せず、噂程度にしか語られてはいないが、2人(1人と1匹というべきか)の証言が補完し合っているのが分かる。
これだけでほぼ確定な気がしなくもないが、他にも理由はある。
2つ目は、父ちゃんザルードだけが感じることのできる「セレビィの気配」だ。
父ちゃんザルードが初めてココと出会うシーンや、物語終盤にセレビィが現れた際にあらわれた、「ピンクの光」のようなもの。この光の正体は「セレビィの気配」なのではないだろうか。
ココと出会うシーンではセレビィは登場していないが、おそらくどこかに身を潜めていて、ココと父ちゃんザルードを引き合わせたのだろう。
3つ目は、父ちゃんザルードだけが使うことができる「ジャングルヒール」という力だ。
父ちゃんザルードの話によれば、ジャングルから力を分けてもらうことで、地面から植物が伸びてくるほどの生命力を与えて怪我を治癒したり、自身の能力を爆発的に向上させることもできるようだ。(後者は「ジャングルヒール」とは呼ばないのかもしれないが、自然の力を借りていることには違いない。)
実はこの能力、セレビィがもつ能力と酷似しているのである。
セレビィは、傷を癒したり、植物を操る力を持っているとされており、故に「森の護り神」と呼ばれているのだが、父ちゃんザルードは卵の段階でセレビィの加護を受けていたのではないだろうか。だからこそ、他のザルードには使えない能力を父ちゃんザルードだけが使えたのだ。
これだけの理由が揃っていれば、父ちゃんザルードがセレビィの卵から生まれたというのも頷けるだろう。
では、なぜセレビィは自らジャングルを救わなかったのか。
それは、セレビィがあくまで「護り神」であり、世の行く末を見守ることしかしないからではないだろうか。
ジャングルに危機が訪れることを知ったセレビィは、直接的に関与はせず、そのきっかけとなる存在として父ちゃんザルードを連れてきたのだ。そもそも、ジャングルに危機が迫ったことで姿を消したセレビィは、どこかへ消えたのではなく、ひっそりと身を潜めてジャングルの行く末を見守っていたとも考えられる。
ジャングルの危機が去った物語終盤にふらっと登場するあたり、無邪気というか、気まぐれというか、なんとも不思議なポケモンである。
ちなみに、本作で登場したセレビィの行動や能力については、以下のとおり本家ゲーム『ポケットモンスター』の「ずかん」にて、各バージョンごとにしっかりと説明されている。
じかんをこえて あちこち さまよう。セレビィが すがたを あらわした もりは くさきが おいしげるという。
ポケットモンスター 金/リーフグリーン/ハートゴールド
セレビィが すがたを けした もりのおくに のこされた タマゴは みらいから もってきたもの らしい。
ポケットモンスター 銀/ファイアレッド/ソウルシルバー
もりのかみさま として まつられる。きれいな もりが あるところ そこに セレビィは あらわれる。
ポケットモンスター クリスタルバージョン
ときを こえ みらいから やってきた ポケモン。セレビィが すがたを あらわす かぎり あかるい みらいが まっていると かんがえられている。
ポケットモンスター ルビー/サファイア/エメラルド
じかんを こえる ちからを つかう。へいわな じだいにだけ すがたを みせると いわれている。
ポケットモンスター ダイヤモンド/パール
しっかり図鑑の内容を回収していてなかなか面白い。
こういった細かな設定もポケモンの魅力の一つである。
それにしても、未来からの過去に何かを持ってくる……となると、タイムパラドクスは大丈夫なのだろうか?ついそんなシュタゲ的な方向に持っていきそうになるが、そんなこと言い出したらあと一万字くらい書いてしまいそうなので、ここでは割愛する。
散々細かいこと言っておいてこんなこと言うのもおかしいが、純粋に作品を楽しむこと、それが一番大切なのだから。