「さぁ、サッカーを楽しもう」
試合前にこんな言葉をかけてくれる監督だったら、サッカーを好きになれたのだろうか・・・。
父が指導者だったこともあり、物心ついた頃から中学3年までひたすらサッカーを続けてきた。
もはやサッカーは日常の一部と化していた。
でもいつからか楽しさは消え、日常であるサッカーは辞めるという選択肢を考えることも許さず、ただ辛く耐え忍ぶ日々を過ごし、負けず嫌いが功を奏し（災いし？）たのかレギュラーに選ばれてはいたが、正直サッカーというスポーツが嫌いだった。
まぁ、これ私の話なんですけどね。笑
アラサーの今となっては、良くはないんだけど、もう良き思い出ってことにすることにした。別に父は何も悪くないし、練習が足りなかったのかなとか、チームメイトと反りが合わなかったのかなとか、そもそもチーム競技に向いていなかったのかもなとか、結局のところ原因は自分自身なのだろう。
そろそろタイトル詐欺を疑われそうなので、どうでもいい私のエピソードは終わります、すいません。まぁ要するに、そんなとき「さぁ、サッカーを楽しもう」なんて言ってくれる指導者がいたら、私は救われていたのかな・・・？とかなんとか思ってしまったわけだ。
こんな過去を抱えるアラサーでさえ、「あぁ、サッカーっていいな！」って思わせてしまうほどの魅力を有するのが、今回ご紹介する映画『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』なのである。（←無理やり戻ってきた。）
青春が、情熱が、葛藤が、染みる染みる。
エンドロールもずるい。経験者には特に刺さる。
・・・泣ける。
さて、詳しい感想は後述するとして、そんな映画『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』だが、映画に先駆けてテレビアニメ版が放送されている。原作既読済みなら問題ないが、この流れでいけば当然テレビアニメ版を観てから映画を観るべきかって疑問が湧くことだろう。
そこで今回は、映画『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』とテレビアニメ版の違いについて解説していく。
例によって、映画の感想（ネタバレなし）も後述しているので、お時間が許すようなら読んでいただけると幸いである。
目次
『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』ってどんな映画？
女子サッカーを題材とした熱いスポーツ作品。ひたむきにサッカーと向き合う少女達の、あまりに眩しい青春に感動必死。
引用元：MIHOシネマ
【作品情報】
監督：宅野誠起
脚本：高橋ナツコ
原作：新川直司『さよならフットボール』/『さよなら私のクラマー』
出演：島袋美由利（恩田希 役）、若山詩音（越前佐和 役）、内山昂輝（山田鉄二 役）、逢坂良太（竹井薫 役）、土屋神葉（谷安昭 役）、遊佐浩二（鮫島幸造 役）、白石涼子（恩田順平 役）
主題歌：小林愛香『空は誰かのものじゃない』
アニメーション制作：ライデンフィルム
公開：2021年
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映画版とテレビアニメ版の違いとは？
テレビアニメ版の後に映画版を観るべきか、映画版を観た後にテレビアニメ版を観るべきか、はたまた総集編的な映画なのか、気になった人も多いことだろう。
結論としては、映画版→テレビアニメ版の順番で観るのがおすすめである。
なぜなら時系列的にこの順番となるからだ。
先に放送開始されたテレビアニメ版『さよなら私のクラマー』が高校女子サッカーの物語を描いているのに対し、映画『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』はその前日譚である小中学生編を描いている。前日譚を知ることで、主人公である恩田希のサッカーにかける想いが分かり、より高校生編を楽しむことができるのだ。
それならなぜテレビアニメ版が先に放送されてしまったのか、これは映画版がコロナの影響で公開延期になってしまったためだ。当初の予定では映画版もテレビアニメ版も同時期に放送・放映されるはずだったが、コロナの影響により映画版のみ2ヶ月延期されてしまったため、不本意にも順番が逆になってしまったのである。
しかし、必ずしも映画版→テレビアニメ版の順に観なければならないわけではない。
実は、映画版とテレビアニメ版は原作が違う。おそらく有名なのはテレビアニメ版の原作漫画『さよなら私のクラマー』だろう。こちらは月間少年マガジンにて2016年～2021年まで連載されていて全14巻で完結している。映画版はというと『さよならフットボール』という全2巻の漫画が原作で、マガジンイーノという雑誌にて2009年～2010年にかけて連載されていた。
なんとこの『さよならフットボール』は、作者である新川直司の大ヒット漫画『四月は君の嘘』よりも前に連載されていた漫画で、6年の時を経て続編『さよなら私のクラマー』が連載スタートしたのだ。続編とはいえ、それぞれが独立した作品としても楽しめるため、順番が前後しても問題ないストーリー構成となっている。『さよならフットボール』は所謂“エピソード０（ゼロ）”や“オリジン”的な作品と言えるだろう。
ちなみに『四月は君の嘘』は、音楽に魅せられた少年少女の葛藤と生き様を描いた傑作で、感動必至。興味ある方はハンカチ片手に作品に臨んでほしい。こちらもテレビアニメ化および実写映画化されていて、双方クオリティの高い仕上がりになっているのでオススメだ。
【感想】センスは圧倒的フィジカル差を越えられるのか
自分がサッカー経験者ということもあり、サッカーを題材とした作品としてとても楽しめたし、主人公である恩田希という少女の苦悩やその先の「サッカーを楽しもう」っていう感情がすごく心に響いた。
物語は希が小学生の頃から始まる。当時から類まれなるサッカーセンスを発揮し、ファンタジスタとしての片鱗を魅せる希は、男子相手でも向かうところ敵なし。同学年の男子たちからもサッカープレイヤーとして一目置かれる存在であった。
そんな希が中学校へ進学しサッカー部へ入部するのだが、ここから希のサッカー人生は波乱の幕開けとなる。希の通う中学校には女子サッカー部はなく、入部したのは男子サッカー部（女子も入部可）だったのだ。（これまで男子相手に無双してきたわけで、希は女子サッカー部がないからという理由ではないと思うが・・・。）
中学生ともなれば、学年が上がるにつれて男女に体格差が生まれる。サッカーで重要とされる要素「フィジカル」だ。希はこのフィジカルという壁に苦悩し続けることになるのだが、そこへ持ち前のサッカーセンスを武器にどう挑んでいくのか、サッカープレイヤーにとって何よりも大切な要素とは何なのか、というのがこの作品の肝である。
ジェンダーがどうだと言われたりもしているが、『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』という映画はそこがテーマではないと私は思う。言うなれば、これはサッカープレイヤー“恩田希”の生き様である。彼女はサッカーが好きで好きでたまらないのだ。希が相手にしているのは“男子”ではない、“フィジカル”というサッカーの一要素を相手にしているのだ。そこへ彼女なりのセンスやパスや時には荒技を使い、自分の持ち得る手札のすべてを駆使して挑む。だからこそ彼女の悔しさが犇々と伝わってくるし、彼女の頑張りが心に響くのである。
そう、これは、サッカー映画であり、青春部活モノであり、恩田希の生き様とそのオリジンを描いた成長の物語なのだ。
サッカー経験者はもちろん、現在青春真っ只中の学生たち、かつて青春をしたりできなかったりした大人たち、みんなが熱くなれる作品に仕上がっているので、まだ観たことがないという方はぜひ映画『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』に触れてみてほしい。
積極的にCGを盛り込んだ試合シーンは、決してCGのクオリティが高いとは言えないものの、希視点によるドリブルシーンや、センスあるカメラワークによって、流れるような試合展開を再現しているので、こちらもぜひ注目してみてほしい。
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原作やテレビアニメ版も要チェック！
今回ご紹介した映画『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』を観た方は、ぜひ続編である『さよなら私のクラマー』も観てみてほしい。
高校へ進学し女子サッカー部という新しい舞台で活躍する恩田希はもちろん、実力ある個性豊かな仲間の登場に加え、弱小高の成り上がり、弱小校なのに何故か強豪校出身選手が入部、元日本代表がコーチ就任など、これでもかと詰め込まれた面白要素は必見である。正直テレビアニメ版は若干クオリティに粗が目立つが、ストーリーは良いし、作画が気になる方には漫画版もオススメである。
逆にテレビアニメ版を先に観た方は、映画版の方がクオリティが段違いなので、ファンタジスタ恩田希のオリジンをぜひその目でチェックしてみてほしい。
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※本ページの内容は、2021年3月1日時点の情報です。最新の情報は、dTVの公式ページにてご確認ください。
