感想『マネーモンスター』テレビの向こう側はフィクションなのか

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世界中のお金

My money ain’t funny and it keep coming I welcome the money and the cash ~♪

 

映画『マネーモンスター』を見てからというもの、この曲が頭から離れない。もちろんジョージ・クルーニーのダンス映像付きで。実際には「キャッシュ♪」のところしか聞き取れてないんですが(←歌詞は調べた)、とにかく頭の中をノリノリのクルーニーが小気味よく踊っているのです。実際、セクシーなお姉さんを引っさげてラップ唄いながらノリノリのMCが登場する番組なんて日本じゃあり得ないんでしょうけど、欧米では普通なんですかね?日本にもこんな番組があったら、内容はともあれ登場シーンだけでも見てみたいですよね。

 

まぁ曲のことはさておき、生放送中に起きたとある事件を番組中断することなく中継し続けて真相に迫っていくという「リアルタイム・クライムサスペンス」はとても斬新で、まさに生放送番組を見ている視聴者の一人になったような感覚に陥ってしまいました。

そんな映画『マネーモンスター』のタイトルには一体どんな意味が込められているのでしょうか?劇中で何度も映される民衆たちにその答えがありました。そして終盤にパティが口にした言葉の意味とは?

映画の感想と共に考察していきたいと思います。

 

『マネーモンスター』ってどんな映画?

株の情報番組『マネーモンスター』。その生放送収録中、立てこもり事件が勃発する。犯人は中継を続けさせ、番組MCを人質にとるが…。はたして彼の目的は?事件の裏に隠された驚くべき真相が、次第に明らかになる。

引用元:MIHOシネマ

【作品情報】
監督:ジョディ・フォスター
出演:ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコンネル、ドミニク・ウェスト、カトリーナ・バルフ
公開:2016年

 

『マネーモンスター』感想(ネタバレなし)

主役を演じるのはジョージ・クルーニージュリア・ロバーツ。さらにメガホンを握るのはジョディ・フォスターと超豪華な布陣。否が応でも期待値が上がってしまいます。

主要な登場人物はシンプルで、台本無視する番組MCの「リー・ゲイツ(演:ジョージ・クルーニー)」、凄腕の番組ディレクターの「パティ・フェン(演:ジュリア・ロバーツ)」、生放送中の番組をジャックする「カイル・バドウェル(演:ジャック・オコンネル)」、基本はこの3人。タイトル通り株やら投資やら「財テク」の小難しい話はあるけれど、正直わからなくても全く問題はありません。

映画開始早々に前置き的な説明はサクッと済ませて事件発生と、物語の展開は非常にスピーディー。冒頭をざっくりまとめるとこんな感じ。

MCのリーとディレクターのパティがタッグを組む財テク番組の生放送中に、拳銃と爆弾持ってカイルが現れて番組をジャック。動機を聞けば、以前の放送でリーが買うべきと予想(というか断言)したアイビス社の株が大暴落し、その株にありったけの金をつぎ込んだカイルは一瞬で6万ドルを失ってしまった、これは絶対おかしい!責任取れ!と、リーは完全なとばっちり。ここからは、生放送を継続しつつ真相を明らかにしていくという流れ。

テンポよくリアルタイムに進行していくスリリングな展開や、映画を見ている私たちを、だんだんと犯人であるはずのカイルへ感情移入させていくストーリー構成が面白い。とんだイカレ野郎だと思っていたカイルを、気づけば「諦めるな、頑張れよ!」と応援している自分がいてビックリでした。

あと気になったのが、番組をテレビ越しに見つめる視聴者たちや、中継を見に来る野次馬たち。度々映し出される彼らは、テレビの向こう側で命のやり取りがされているというのに、全くの他人事。むしろそれを楽しんでいて、ネタにまでしてしまう。最終的に事件が解決したところを見ると、何事もなかったかのようにテレビから目をそらし、はい解散。画面の向こう側はフィクションではなく、リアルに起きている事件だというのに・・・。テレビの向こうでカイルがいくら発砲したとしても画面から銃弾が飛び出してくるわけではないし、リーが着せられた爆弾チョッキが突然爆発しようと画面から炎が噴き出してくるわけでもない。テレビに映し出される事件が自分に降りかかることはないという絶対的な安心感が「他人事」という形で表れる。逆に、自分にとっても深刻になり得る話題がテレビで取り上げれていたとしたら、きっと皆が画面を食い入るように見つめるはずです。自分はそんなことない?いや、きっと誰もが心のどこかで「他人事」という面を持っているのではないでしょうか。

皆が皆お互いを思い合えたら、確かに世界が平和になるのかもしれませんが、この「他人事」に対する善し悪しをこの作品で言いたいわけではないのでしょう。これは、監督のジョディ・フォスターが意図的に映し出した視聴者への皮肉なのかもしれませんね。もちろんそれは私たち自身にも向けられているのだと思います。

あなたは『マネーモンスター』に映し出される民衆をどう思いますか?

 

なぜ映画のタイトルが『マネーモンスター』なのか

映画を見ている私たちは、劇中のでテレビを見つめる民衆と同じく『マネーモンスター』という番組を見させられているこの状況こそが『マネーモンスター』というタイトルの意味なのだと思います。

だからこその生放送番組という設定であり、中継を見ているかのような構成なのです。リアルタイムに進行する事件の状況を、劇中の民衆と同じようにモニターやスクリーン越しに見つめる。まさに映画の中の出来事を追体験するかのような仕組みになっているんですね。

とどのつまり、私たちを皮肉っているとも言えるんですけどね・・・。

もちろん、実際に番組を見ていてもパティのいるモニタールームは映らないし、アイビス社内のやり取りが放送されたりはしないわけですが、それは補足的な描写であって、この映画のコンセプトとしては、まるで生放送番組を見ている視聴者の一人になったような感覚を味わわせることが狙いだったのではないでしょうか。

 

ラストシーンでパティがリーに言った言葉の意味とは

※映画の核心に触れる内容ではありませんが、この章にはネタバレを含みますのでご注意ください。

 

事件解決後のラストシーンでは、パティがリーにこんな言葉を口にします。

「来週の番組はどうする?」

あんなに大変な事件があった後なのに、よく次の番組の事が考えられるぁと思ってしまいそうな会話ですが、この言葉は物語中盤でリーがカイルに話したことへのアンサーとなっています

「(パティは)内緒で向かいの局に移る気だ。噂ではな。皆去る。そんなもんさ。」

パティは近々別のテレビ局へ移る予定でいたのです。しかし、この事件をきっかけにリーとのコンビを続けたいと思ったわけですね。確かに、リーとパティのコンビネーションがなければ、今回の事件は解決していなかったのかもしれませんし、もっと最悪の結果を招いていたのかもしれません。

きっとリーは恥ずかしくて面と向かっては言えなかったけれど、パティとずっと番組を続けていきたいと思っていたのだと思います。ひとつ間違えば命を落としていたかもしれない災難に巻き込まれたリーでしたが、事件のおかげでパティとのコンビを続けることができ、不幸中の幸いとなりました。

 

ジョージ・クルーニーもノリノリのエンディング楽曲にも注目

『マネーモンスター』の番組オープニングでジョージ・クルーニー演じるリーの登場とともに流れるノリノリな楽曲、Dan the Automator の『What Makes the World Go ‘Round (MONEY!)』は映画のエンディングにも使われています。

 

面白いことに、字幕版の日本語でも歌に合わせてちゃんと韻を踏んでいたりするので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 

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